【地域情報紙ぷれすしーど　2022年3月25日号掲載】

　終活の中でも不動産の名義変更は後回しにしがちです。タイミングを逃すと家族が困ることを、先日のご相談を元にお伝えします。

　骨折で入院した84歳の独身のKさん。退院後は一人暮らしは危ないと判断した、唯一の肉親の弟さんからの依頼で施設探しが始まりました。今はまだ要介護度が重くないので施設の費用を年金でギリギリ支払えますが、介護度が上がると医療費やおむつ代が増え、足りなくなります。困ったことにKさんには貯金が全くありませんでした。

　弟さんも年金暮らしで金銭的援助は厳しく、兄弟で話し合い、両親より受け継いだ自宅を売却することにしました。幸い、ある程度の価値が認められ、多少の蓄えができましたが、取り急ぎ、ホームの敷金は弟さんが立て替えました。

　「自宅に価値があったこと」より幸いだったのは「現在の名義人がご存命で、認知症ではなかったこと」です。もしKさんが認知症だったらスムーズな売却は叶わず、弟さんの負担はさらに増えるところでした。

　不動産の名義変更のタイミングは決めにくいものですが、元気なうちに方向性だけでも定めておくことをお勧めします。